Index

OSI参照モデル:ネットワーク通信の「共通言語」

1 はじめに

OSI参照モデル(Open Systems Interconnection reference model)とは、一言で言えば「コンピュータ同士が通信する際のルールを7つの段階(レイヤー)に整理した世界標準の設計図」です。

なぜ今、この古典的なモデルが重要なのでしょうか? 現代のネットワークは非常に複雑ですが、このモデルがあることで、エンジニアは「どこで」「何が」行われているかを共通の概念として理解できます。通信トラブルが起きた際の原因切り分けや、新しいプロトコルを学習する際の基礎として、OSI参照モデルは今なお不可欠な知識です。

2 ビギナー向け・ドキュメント

概要:郵便で例えるネットワーク通信

初心者の方は、OSI参照モデルを「手紙や小包を届けるプロセス」に例えると理解しやすくなります。

データ(手紙)が相手に届くまでには、以下のように役割が分担されています。

  • 第7層〜第5層(アプリケーション・プレゼンテーション・セッション): 手紙の内容を書き、翻訳し、封筒に入れる。(アプリケーションの処理)
  • 第4層(トランスポート): 信頼性の高い書留にするか、速達にするか決める。(データの品質管理)
  • 第3層(ネットワーク): 宛先の住所を見て、どのルートで届けるか決める。(宛先決定・経路制御)
  • 第2層(データリンク): トラックに積み込むためにパレットに載せる。(隣接機器への伝送)
  • 第1層(物理): 道路を走るトラックそのものや、道路。(電気信号・ケーブル)

公式情報・リファレンス

この技術はISO(国際標準化機構)によって策定されました。

導入:階層を意識するコマンド

OSI参照モデル自体は「概念」なのでインストールするものではありませんが、コマンドを使うことでその階層を意識できます。 例えば、ping コマンドは主に「第3層(ネットワーク層)」の疎通確認に使用されます。

# GoogleのDNSサーバー(8.8.8.8)へPingを送信
# これは「IPアドレス」を使って「ネットワーク層」で到達可能かを確認しています。
ping -c 4 8.8.8.8

# 出力例
# PING 8.8.8.8 (8.8.8.8): 56 data bytes
# 64 bytes from 8.8.8.8: icmp_seq=0 ttl=115 time=12.435 ms

3 会話集

エンジニアの現場や学習の場でよくある会話例です。

Q1. なぜTCP/IPモデルのほうが普及しているのに、OSIを学ぶの?

先輩: 「確かに実務ではTCP/IP(4階層または5階層)で考えることが多いね。でも、トラブルシューティングの時はOSIの7階層で考える方が原因を特定しやすいんだ。『L1(物理)のケーブルは抜けてないか?』『L3(IP)の設定は合ってるか?』と下から順に疑うのが定石だよ。」

Q2. 「レイヤーが高い・低い」ってどういう意味?

同僚: 「物理的なハードウェアに近い(ケーブルや電気信号)側を『低いレイヤー』、人間が触るアプリケーションに近い側を『高いレイヤー』と呼ぶよ。ルーターはL3(低め)、WebブラウザはL7(高め)に関わるね。」

Q3. 面接で「カプセル化について説明して」と言われたら?

応募者: 「データが送信される際、各レイヤーでヘッダ(荷札のような情報)が付与されていくプロセスのことです。逆に受信側でヘッダを外していくのを非カプセル化と呼びます。マトリョーシカ人形のようにデータが包まれていくイメージです。」

4 より深く理解する為に

アーキテクチャ:カプセル化の旅

データが送信されるとき、上位層から下位層へ渡されるたびに、その層特有の制御情報(ヘッダ)が付加されます。

  1. L7〜L5: データそのものを作成・整形。
  2. L4 (Transport): TCPヘッダ等を付与(セグメント化)。ポート番号でアプリを識別。
  3. L3 (Network): IPヘッダを付与(パケット化)。IPアドレスで宛先を特定。
  4. L2 (Data Link): Ethernetヘッダを付与(フレーム化)。MACアドレスで隣の機器を特定。
  5. L1 (Physical): ビット列を電気・光信号に変換して送出。

実務でのユースケースと注意点

  • L2スイッチ vs L3スイッチ: 購入選定時、単にハブとして使うならL2、VLAN間ルーティングなどが必要ならL3スイッチを選びます。
  • セキュリティ: ファイアウォールはL3/L4(IPとポート)で制御しますが、WAF(Web Application Firewall)はL7(HTTPの中身)を見て攻撃を防ぎます。どのレイヤーを守るかで導入する機器が変わります。
  • 「レイヤー8」問題: ジョークとして「レイヤー8(ユーザー自身)の問題」と言われることがあります(例:電源が入っていない、操作ミスなど)。技術的な問題の前に、人為的ミスがないか確認することも大切です。

5 関連ワード

  • TCP/IPモデル: OSI参照モデルをより実用的に簡略化した、インターネットの事実上の標準モデル(4階層)。
  • MACアドレス: 第2層で使用される、ネットワーク機器固有の物理アドレス。
  • IPアドレス: 第3層で使用される、ネットワーク上の論理的な住所。
  • ポート番号: 第4層で使用される、通信するアプリケーション(サービス)を識別する番号。
  • PDU (Protocol Data Unit): 各レイヤーで扱われるデータの単位(セグメント、パケット、フレームなど)。

6 要点チェック

  • OSI参照モデルは7つの階層で通信機能を分割整理した設計図である。
  • 下から順に物理・データリンク・ネットワーク・トランスポート・セッション・プレゼンテーション・アプリケーション層と呼ぶ。
  • データ送信時はカプセル化(ヘッダ付与)、受信時は非カプセル化が行われる。
  • トラブルシューティングは「物理層(L1)」や「ネットワーク層(L3)」など、レイヤーごとに切り分けるのが基本。
  • 実務ではTCP/IPモデルが主流だが、会話や理解のベースとしてOSIモデルの知識は必須。

最新記事一覧

続きを見る

関連コンテンツ

カテゴリー一覧

TOP フルスタックエンジニアを目指すに方々へ ネットワーク機器と技術